【完】俺が愛してやるよ。




あたしが連れてこられたのは当初言っていた職員室…ではなくて何故か校長室だった。


部屋に入ってすぐに視界に入った革製の黒いソファーには何故かお母さんがかしこまって座っていた。


なんでここにいるの…?

まさか、親にまで連絡したの?

なんでそんな余計なことするの?

あたしの頭の中はお母さんが来ていたことによっていつもの冷静さをなくしていた。

だけど、怪しまれないように平然を装った。



「お母様にも来ていただいたわ」


来る必要なんてないじゃん…。


もしかして、心配して来てくれた…?

なんてありえないことを思ってしまうのはきっとあたしがまだお母さんを想っているから。



「今回はこの子がお騒がせして本当にすみませんでした。」



そういうと、お母さんはソファから立ち上がり先生たちに深々と頭を下げた。


だけど、一方であたしの淡い期待はお母さんの言動によってズタズタに壊された。


どうして謝るの?

それじゃあ、あたしがしたって決めつけてるもんじゃん。

あたしは何もしてないのに。


結局、あなたは自分の名誉を守るためにここに来たんだ。


ちょっとだけ期待してしまっていた自分が恥ずかしくなる。


本当に愛されてる子なら、
子供のことをよく理解している親なら…


『うちの娘がそんなことするはずありませんっ!』

って言ってくれるのだろうなぁ……なんて、ドラマの観すぎかな?



「相手の子に怪我がなかったかはよかったものの…こういうことは困ります」



なんで…なんであたしが
悪いみたいな言い方になってるわけ?



「本当に本当に申し訳ございませんでした…ほら、あんたも…!」



あたしはお母さんに後頭部を抑えられて無理矢理、お辞儀をしている形になった。

こういう時だけ…母親ぶるんだ。