「人の男、奪っといて何が知らないよ!」
「いたっ…」
女の子はあたしの髪の毛を掴んでグッと引っ張った。
周りは助けてもくれなくてただヒソヒソと話して物珍しいものを見るような瞳をして見物しているだけ。
どうせ、あたしがこんな目にあってても心の中じゃ笑ってんでしょ?
でも…何もしてないあたしが何でこんな目にあわなきゃいけないの…っ。
そう思いながらも必死に耐える。
「謝んなさいよ…!!」
ついに、女の子は子供のようにワンワンッ、と泣き出して掴んでいた髪を離した。
これじゃあ、まるであたしが悪いみたいじゃない。
悪いのは確実にそっちなのに。
髪の毛はただでさえ湿気でくしゃくしゃだったのに引っ張られたせいで余計に乱れてしまった。
こっちの方が最悪だってば。
今日はとことんついてない。



