そう思い、傘立てに手を伸ばしたけど、
途中でやめて結局そのまま駅へ向かって歩き出した。
だって、あたしが傘を持っていったら志穂が使う傘がなくなっちゃう。
別に志穂のことが嫌いなわけでもないし、好きなわけでもない。
だって、話さないのだから。
あたしの家族はまるであたしを空気のように扱っている。
志穂が使っていた傘はこの前骨組みが折れてしまったから使えないらしい。
志穂が濡れて帰ってきて風邪をひかれてもみんな困るだろうし。
だから…濡れるのはあたしの方がいいんだ。
そう思いながら歩みを進める。
とはいって……
最悪なものは最悪。
結局、帰りは濡れて
帰らなきゃいけないかもじゃん…。
やっぱり、いくら綺麗事を並べても濡れて帰るのは苦痛だ。