工藤瞬は、ふぅと息を吐くと、あたしの背中をポンポン叩きながら言った。

「ねぇ和奈姉、もう一回“瞬”って言って?」

「…え?」

あたしは思わず顔を上げた…顔を上げて、涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、ぼやけた視界の中の工藤瞬を見た。

そしてすぐに、また下を向いた。

「あの時、超嬉しかったんすよ。」

「…やだ。」

あたしは意地悪く言った。

「え~っ!いいじゃん!」

「やだってば。」

あれは、なんていうか…勢いというか。

悔しまぎれに…。

「もー和奈姉には勝てないっす!あははッ!」

膨れっ面で下を向くあたしに、工藤瞬は元気良く笑った。

「…ふふっ。」

あたしも、涙を拭きながら笑っていた。

涙を拭いた後、あたしの目からは、もう涙はでてこなかった…。