「ど、どうしたの⁈そんなに熱かった?あっ!それともさっきの化粧のコト⁈ごめんッ!まぢごめんなさい!」

もちろん、理由はそんなんじゃない。

あたしは、ただ…泣ける口実が欲しかっただけなんだと思う。

好きな人の隣は、あたしの場所にはならないーーー…。

それを、知ってしまった。

知りたくなかった。

識(し)りたく…なかった。

でも今ここに、あたしを好きだと言ってくれる人がいる。

なんでそれが、篠田くんじゃないんだろう…。

なんで…。

「工藤瞬のばかぁッ…!」

あたしは更に涙を流した。

黒いローテーブルの上に、その姿を増やしていく水玉模様…。

涙で出来た、水玉模様。

「わっ⁈和奈姉ッ…!」

あたしはこらえきれず、気持ちの持っていく場所もなく…工藤瞬の胸に、おでこをつけて泣いた。

頬を伝うことなく、真っ直ぐに落ちる涙の粒ーーー…。

それは、重力に従順だった…。