「瀬口、浴衣着よーね!」

あぁ、あやねは超乗り気だよ…。

「瀬口姉、絶対来てくださいねっ!瞬のこと気に入るかもよ?」

それは多分…ないから。

「やべ、初デートっすね。あ、生輝が“瀬口姉”だから、俺は“和奈姉”って呼ぼっと。」

みんな…なんて強引なんだ。

あたしには好きな人がいるって言ってんのに、お構い無しじゃん…。

この3人、絶対忘れてるよ…。

「じゃぁ和奈姉、ケータイの番号教えて下さいね。」

「はいはい…。」

あたしは、半ばヤケ気味になっていた。

早く解放してくれないかなぁ…。

そんな事を思いながら、目線を篠田くんの机に落とした――…。



それからというもの、工藤瞬は何かと用事を作っては、あたしのところに来る様になった。

「和奈姉!いい加減フルネームで呼ぶの、やめて下さいよ~。」

「工藤瞬は工藤瞬でしょ。ゴロあわせがいいんだもん。」

「瞬って呼んでほしいっす!」

「じゃぁ和奈姉って呼ぶの、やめてよね。」

少しずつだったけど、あたしは工藤瞬との会話を楽しめるようになっていた。