水玉模様

後はあたしが削除を選択するだけで、文字通り消えてなくなる。



「瀬口…さん?」

今まさに削除しようとしたあたしの人差し指は、簡単に躊躇ってしまった…。


人が、入ってきたことにすら、あたしは気づいていなかった―――名前を呼ばれ、あわててケータイの画面を消した。


「先客がいたなんて、ちょっとビックリ。」

そう言ってあたしの斜め前に座ったのは…篠田くんだったんだ。

「…。」

「何してんの?」

「し、篠田くんは…?」

「あぁ、ちょっと眠れなくて。」

「…あたしも。」

「そっか。」

そこまで言うと、篠田くんはわずかに笑顔になった…。

「先生達…見回り、来るかな?」

「この時間ならヘーキじゃない?てかここならバレないでしょ、中見えないし。」

喫煙所は壁になってるガラスが透けてないから、中はよく見えない。

ここならバレない…って、篠田くんもあたしと同じこと考えてたんだ。