宿に着く前に見た鱗雲(ウロコグモ)からかすかに漏れる夕陽に、哀愁の様なものを感じた。


「あ!生輝にメールしよ!」

大部屋に入って荷物を下ろすなり、あやねはケータイとにらめっこを始めた。

「瀬口はいいの?瞬くんにメール。」

「…。」

あたしは瞬に、今日の感想と宿に着いたことをメールした。


《お疲れ〜。夜更かしすんなよ。楽しんできてね!》

「…。」

すぐに返ってきたメールを見て、何だか嬉しくなった。

離れていても繋がってると思えるのは、瞬があたしの彼氏になったから。

あたしが、瞬の彼女に…なったからなんだ。


「瀬口!お風呂行こ、早く!」

「も~待ってよー!」

お風呂に入ったら、ご飯が待ってる。

のんびりなどしていられない…団体行動のさだめだわね。