頼利さんは当然のように、らみちゃんの近くの席に上がり込んだ。
わたしも同じ座卓に着いて、美香子先生もカウンターからお酒を持って引っ越してくる。
「なぎさ先生、こちらのかたは、らみちゃんの保護者さん?」
うなずくと、美香子先生は頼利さんにそつのない挨拶をした。
頼利さんが会釈を返す気配がある。
気配だけを感じてる自分に気付いて、下向いてるんだなってわかった。
疲労感が背中にのしかかってきてて息苦しい。
俊くんがかがんで、わたしの顔をのぞき込んだ。
「なぎちゃん、何があった? ただごとじゃない顔してるよ」
大丈夫、と空元気を出してみせる余裕もない。
ただ、俊くんには確認しておかなきゃいけないことがある。
「今日、ここに加納が来なかった?」
「え? 加納って、なぎちゃんの元カレの?」
「うん。来てない?」
「来てないよ。もしかして、なぎちゃん、あの男に会ったのか?」
俊くんが厳しい顔をするのと、美香子先生の手がわたしの肩をつかむのが同時だった。
美香子先生の小さな手に、キュッと力が込められる。
「わたしは会ったわ。文科省の、加納さんという男の人」
「え? 何で美香子先生が……?」



