スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―



加納に食って掛かったのが猛烈なストレスになったのか、らみちゃんは車の中で気を失うように眠ってしまった。

頼利さんの話では、このまま朝まで目覚めないだろうって。


らみちゃんを即席ベッドに寝かせてタオルケットを掛けて、その周辺だけ明かりを落とす。

俊くんちのおじさんが奥から出てきて、俊くん同様にわたしの顔色に驚いた。


わたしが事情を話すのに口ごもってたら、おじさんは表の暖簾を外して看板を引っ込めてきた。

表戸にカチリと鍵をかける。


「今日はおしめぇだ。おじさんは2階に引き上げるから、なぎちゃんたちはここでゆっくり腹ごしらえして作戦会議でもやりな。

シンデレラの魔法が解けるみたいに、明日の朝までに元気ななぎちゃんに戻らねぇと、学校の子どもらが心配するだろ?」


おじさんは、癒し系なところのある俊くんと違って、江戸っ子の早口のべらんめえ口調が勇ましい。

シンデレラの魔法みたいな、似合いもしないのにオシャレなことを言いたがるけど、たいていちょっとずれてるところがかわいいんだ。


「ありがとう、おじさん。でもね、シンデレラは魔法がかかってる間ハッピーだったけど、わたしはさっさともとに戻らなきゃいけなくて、そこ、逆だから」


「わかってらぁ」


カラリと笑うおじさんにつられて、わたしも笑った。

あ、そっか。

とぼけてみせたのは、わたしを笑わせるためだ。