でも、わたしは別にライヴを聴きに来たわけじゃなくて、らみちゃんを追い掛けてきたんだ。
探させてもらわなきゃ困る。
若いくせに頭の固そうなこのウェイターさんに、何て説明したらいいんだろう?
と、わたしがちょっと悩んだ瞬間。
「あっ! 先生だー!」
元気な女の子の声が、くすんだ音色のBGMの中に響き渡った。
談笑していた人々が、ざわめきを止めて注目する。
ステージの目の前のテーブルのそばで、らみちゃんがピョンピョン弾んで、わたしに手を振った。
ウェイターさんが、急に表情を和らげた。
「なるほど、らみちゃんのお知り合いですか。どうぞ、前のほうへ。椅子をもう1つお持ちします」
「あ、ありがとうございます」
「ご案内します」
と、申し出てはもらったものの、らみちゃんがわたしのところまで飛んでくるほうが早かった。
肩に届くか届かないかの長さの髪が、うらやましいほどサラサラ弾む。
「わーい、ほんとに先生だ! あのね、今日、すごいんだよ。いっぱい音が聴けるんだよ! でね、ジュースおいしいんだよ。それでね、ライリが英語しゃべるの!」
「ら、らみちゃん、ちょっと待って? 順番に話してくれる?」



