演奏してる彼らをうらやむ気持ちも、少しある。
ただ、尊敬する気持ちのほうがずっとずっと大きい。
すごいなあって、ひたすら感動する。この感動を子どもたちにも教えてあげたいな、と思うのは、教師になった今のわたしの、誇るべき職業病だ。
「ピアニストにはなれなくても、ピアノは続けてました。高校時代に、先生になろうって決めて。教員採用試験に楽器ができることは必須だし、音楽が素敵だってことを子どもたちに伝えたかった。
今は、その環境に身を置いてはいても、うまくできてるかはわかんなくて」
音楽や図工や道徳、国語の物語単元で、ふと不安が胸に差すことがある。
わたし、子どもたちを型に嵌めようとしてるんじゃないかな、と。
わたしは意識を現実に戻して、らみちゃんを見た。
らみちゃんは、まだ幸せそうに目を閉じて、微笑んだ唇でハミングをして、うなずくようにリズムを取っている。
らみちゃんのこんな生き生きした姿は、初めて見た。
学校でも元気いっぱいだし、音楽の時間は張り切っている。
でも、最高に素晴らしい演奏に身を浸す様子は、ハッと胸を衝かれるほど楽しそうだった。
わたしは、らみちゃんに、正真正銘の生き生きな姿で毎日を過ごしてもらいたい。
本人が気付かないうちにストレスを背負って熱を出してしまうなんて悲しい。
らみちゃんを身近に見守る大人のひとりとして、らみちゃんの個性を大事にしたい。



