スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―



☆.。.:*・゜


ウォーターサイド・ジャズ・オーケストラのライヴはやっぱり圧倒的だった。

音の奔流の中で揉みくちゃにされて、しかも今日は2セット。

閉幕後は立ち上がれないくらい、ふらふらになっていた。


「わたし、小さいころから、ピアノだけはよくできたんです。小学生のころは、将来ピアニストになれるって勘違いしてたくらい」


心地よい余韻の中で、ぼぅっとしながら、正直な言葉がほろほろとこぼれていく。

誰に話してるわけでも、誰かに聞かせたいわけでもない。

ただ、音楽というものへの想いを、今、言葉にしてみたいんだ。


「中学に上がって、だんだん理解するようになりました。地元のピアノ教室でいちばんよく弾けてても、プロになんかなれない。音楽学校に行くレベルにあるかどうかさえ、当時のわたしは危うかった。

ピアノが好きなのに、嫌いになりそうで、苦しかったです」


ビッグバンド・ジャズという強烈な音楽の中で心地よく翻弄されて、ああやっぱりわたしはあっち側には行けなかったな、と正しく確かめた。

わたし、どうやったって、こっち側だ。

あの中に挑んでいける能力もセンスもない。