らみちゃんは車を見送りもせず、迷いもなく地下のライヴハウスへ続く階段を下りていった。
「運転手さん、わたしも降ります!」
「はいはい。先生、頑張ってくださいね」
料金メーターは、すでに止めてあった。
たいした金額じゃなくて、ホッとする。
手早く清算を済ませて外に転がり出ると、湿度の高い夕方の空気は、思ってたより暑かった。
「ライヴハウス・デューク……?」
赤いライトの看板に、アルファベットでそう書いてある。
赤いひさしの下には、地下へと伸びる階段がある。
階段のすぐ脇に出されたボードもやっぱり赤くて、本日のライヴに出演するバンドのポスターが貼ってあった。
なんかいろいろわかんないし、ジャズのライヴハウスなんて入ったこともないし、学校帰りのポロシャツとスウェット地のスカートって格好で大丈夫だろうかと心配なんだけど、迷ってる場合じゃない。
らみちゃんはこの中にいる。
誰だか知らない大人に連れられて、ここにやって来た。
真相を確かめるまでは、後に引けない!
わたしは腹をくくって、ライヴハウス・デュークを目指して、地下へと進んでいった。



