スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―



「はっ? な、何だよ、それ?」


急に慌てた顔になる俊くんは、飲み屋のおにいさんの割に恋バナが苦手で、常連のおじさんたちに「まだまだ坊やだな」って、からかわれる。

わたしとしても、弟みたいな俊くんの前で恋バナをするのは微妙に気まずいし、普段は封印してる話題なんだけど。


「美香子先生、どう思う? チャンスって、どこに行ったらあると思う?」


「こらこら、なぎさ先生、保健室に引きこもるのがお仕事のわたしに、そんなこと訊くの?」


「養護の先生はお医者さんたちと連絡とったりするでしょー」


「あら、校医の先生方が全員、30年前物に熟成したイケメンドクターだということをお忘れ? お子さんがわたしと同世代ですって」


「そーでした。職員室にいらっしゃるのも、20年、30年物の熟成済み既婚者ばっかりだしね」


「なぎさ先生、熟成してない独身者がいても、職員室恋愛はやめたほうがいいわよ。というか、教員同士は危険。

主たる勤務地の変更はできないんだから、別れてもしょっちゅう顔を合わせることになるの。うまくいかなかった場合のダメージが退職まで尾を引くのよ」


「うわっ、それ怖い! 想像したことなかった! え、それじゃあ、仕事つながりでの出会いのチャンスって、ほんとにゼロに等しいわけよね? うわぁ……」