恋人役を頼んだ一件では、メチャクチャ手が早そうって思ったのに、何か拍子抜け。
俊くんと美香子先生のほうが、さっさと先に進んじゃってる。
若くてスポーツマンな俊くんのほうが、まもなく35歳の頼利さんより勢いがあるのは当然かもしれないけど。
というわけで悶々としてたりするわたし、まもなく30歳。
正直言って、29っていう数字より、いっそ30のが開き直れていいな、と思ってる。
1年間も崖っぷちな数字を経験してたら、悟りも開けてくるもんだ。
でもね、だけどね、開き直り前夜のしたたかアラサーとはいえ、「何で手を出してくれないの?」なんて、恋人にズバッと訊けるはずもなくて。
ホテルの部屋に着いて、順番にシャワーを浴びた。
わたしの後でバスルームから出てきた頼利さんは、途中のコンビニで買ってきたワインのミニボトルを開けている。
「まだ飲むんですか?」
「たまにはいいだろ。なぎさも飲むか?」
「無理ですってば。酔って正体を失うようなかわいいレベルじゃなくて、毒でも飲んだかのように猛烈に具合悪くなるタイプなので」
「そいつは残念」
頼利さんは、くいっと軽くワインをあおった。
お土産屋でも売られてる地ワインらしい。
明日、父へのお土産に1本買うことにしよう。



