お人好しそうな彼が頼利さんを見て、ちょっとだけ、いたずらっぽく笑った。
頼利さんは平然として、わたしの肩を抱き寄せた。
「うらやましいだろ? 楽器に向ける甲斐性を、ちっとは女にも向けてみろ」
うーむ、頼利さんが甲斐性のあるタイプだとは言い切れないと思うけど。
連絡、けっこういい加減だし。
まあ、面倒見はかなりよくて、意外と気配りしてくれるか。
頼利さんは珍しくお酒を飲んでいた。
本当はお酒好きらしい。
ただ、移動手段が車であることが多いから、ゆっくり飲める機会はあんまりないんだ。
やがて解散して居酒屋を出た。
初めて訪れた町の夜を、わたしは頼利さんと並んで、ホテルに向かって歩く。
「暑ぃな」
「そうですか? 今日は比較的、涼しいですよ」
「酒飲んだせいかな。しかし、今日は楽しかった。あいつもいい顔してたしな」
暑いって言いながら、頼利さんはわたしの手を離さず、ギュッと体を寄せてくる。
くっつくのが好きな人。
でも、まだ一線を越えてなかったりする。
距離感がよくわからない。



