「ええ。1つの楽器をマスターするも大変なのに、4つですよ。どれ1つとして手を抜くこともできないし。
ベテランになると、本人も最初に練習した楽器が何だったか忘れるくらい、どの楽器も均等に、凄まじくうまいんですよ。一体どうなってるんだか」
そう言って笑う彼も、ニューヨークでは、持ち替えありのスタイルのライヴもちゃんとこなしてる。
「何がいちばん大変ですか?」
どの楽器の演奏が大変かって意味で尋ねたら、質問が言葉足らずだったせいか、若干違った方向から答えが返ってきた。
「運ぶのが大変なんですよね。大荷物になるし、重たいし。
だからニューヨークでは、4種類の管楽器をまとめて運べるケースが売ってるんです。
どの店にいいケースが売ってたとか、あの店のスタンドは軽くていいとか、サックス奏者同士で情報交換するんですよ」
「あ、なるほど。サックスは、パーツの手入れや購入も大変って聞いたことあるし、演奏だけじゃなくて、楽器をお世話する負担は大きそうですね」
「楽しいからいいんですけどね。ぼくみたいなサックス奏者は、パーツを眺めたり磨いたり集めたりするのが好きなマニアックなタイプが多いんですよ。
演奏中はスマートなイメージなのに実はオタク気質だったって、女性にはあきれられてばっかりです」



