☆.。.:*・゜
地下にあるスタジオを簡単に片付けて、地上に続く階段を上りながら、スマホの電源を入れた。
起動が完了した途端、また新たなメールの受信と電話の着信に、スマホがぶるぶるする。
メールを次々と開封していくと、加納の行動が追えた。
つまり、エンパヰヤを出て、電車とタクシーを乗り継いで、喜多小学校とわたしの家、飛梅を調べた後、今は最寄り駅のそばの喫茶店にいるって。
今日はもうクローズした楽器店の中は、絞られた照明が楽器に反射して静かにきらめいて、少し不思議な雰囲気だった。
勝手に鳴り出したりしそうだ。
でも、それはホラーな空想じゃなくて、わくわく系のおとぎ話。
頼利さんはレジ台に体を預けて、わたしはその向かい側で椅子に掛けている。
背筋を伸ばした体勢で、わたしは、キッカリ15分おきに掛かってきていた加納からの電話に、初めて応じた。
「もしもし?」
〈今どこにいるんだ? 何度きみに電話したと思っている?〉
謝らないって決めた。
連絡を無視し続けてた態度は失礼だとわかってるけど、1回でも謝ったら呑み込まれるから、わたしはもう謝らない。



