スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―



らみちゃんは、2年生の国語の授業では、『名前をみてちょうだい』の中に描かれる登場人物の心の動きを十分に読み取ることができなかった。

大男の恐ろしさも、きつねや牛が震えた理由も、えっちゃんの怒りも。


ついこの間、何日もかけて、わたしとらみちゃんは『名前をみてちょうだい』を丁寧に読み解いた。

らみちゃんは、大事な白いぼうしを取り戻すために勇気を奮ったえっちゃんを、とても気に入った。


「ありがとう、らみちゃん。ほんとにありがとう」


言葉がうまく出てこない。

それくらい、もうどうしようもないくらい、嬉しい。

らみちゃんがわたしを取り戻すために勇気を奮ってくれたことも、あんなにわかっていなかった物語の中の感情をちゃんと自分のものにしていたことも。


わたしはしゃがみ込んだまま、らみちゃんを抱きしめた。

らみちゃんも、ぎゅうっと返してくれる。


頼利さんが、ふと、コインパーキングの入口方面に向かって、軽く手を振った。

そちらに視線を向けると、ウォーターサイド・ジャズ・オーケストラのリーダーさんや貴公子、プロデューサーさんたちが笑顔で手を振っている。