「レポートは提出できたのか?」
「ぎりぎりで送信できました」
「ぎりぎり、か。よくないよ。推敲が甘くなるだろう? 前も締切直前に仕上げたレポートの評価が優に届かなかったと言っていたじゃないか。
きみの大学の成績評価は決して厳しくないんだから、きみなら全部、優を取ることもできるはずなのに」
「はい。もったいないことをしました」
「早めにレポートを仕上げてくれたら、ぼくがチェックしてあげられる。論述が甘いところは、きっちり教えてあげるよ」
「次のテスト期間からは、そんなふうにできるように、早め早めに動くようにします」
わたしの答えに、加納は満足そうに微笑んだ。
よかった、今度は答えを間違わなかった。
加納みたいに完璧になることはできない。
わたしにはその能力がないから。
だけど、加納の理想に近付く努力は、怠りたくなかった。
捨てられるのが怖かった。
完璧な人の隣に置いてもらえることだけが、平凡なわたしにとって唯一のステータスだった。
そんなふうにして、大学生のわたしは、加納に教育されていった。
教育?
矯正っていう言葉のほうが近かったかな?
そして、わたしは疲れ果てた。



