「ごめんなさい、わたし、アドバイスしてもらうばっかりで」
わたしは笑顔で自分を否定する。
否定するわたしこそを、加納は肯定する。
次は上手にやらなくちゃ。
この完璧な人に見限られないように、わたしは頑張って大人の淑女にならないといけない。
背もたれに寄り掛からずに、背筋を伸ばして、膝を揃えて座る。あごを引いて、口元には微笑みを。
染めない髪は適度な長さを保って、シンプルで清潔なスタイルを心掛ける。
加納が好きなのは、サイドの髪を後ろでまとめてバレッタで留める、少しレトロなスタイル。
襟付きの明るい色のブラウスに、短すぎないスカートを合わせる。
足下は、7センチ程度のヒールがある靴が最も脚を美しく見せるのだと言われて、慌てて何足か買った。
爪は短くして、やすりで磨く。
加納はマニキュアが嫌いらしくて、ネイルサロンに初めて行ってみた翌日は、不潔だからすぐ落とすようにと指示された。
小学校教諭にはふさわしくないだろう、と正論を持ち出されて、わたしは自分の間違いを認めた。



