信号が青になって、車が発進する。
質問を組み立てようとしていたわたしに、頼利さんは唐突な言葉を放った。
「あんたの幼なじみ、やっぱガキだな」
「え?」
「昨日の今日だろ。いくら明るいバス停とはいえ、ストーカーもどきに付きまとわれてる女をひとりでほったらかすって、考えなしにもほどがある」
「い、いや、でも……って、もしかして、見てたんですか?」
「見てた。バス停の後ろの路肩に停まってたのに、全っ然、気付かねぇんだよな」
「き、気付きませんよ! 声かけてくださいっ」
「どのタイミングで声かけようかと思ってたら、何だったんだ、あれは?」
あれっていうのは、ふわっとハグした俊くんの行動のことだろう。
そのシーンを思い描いて、今さらながら顔が熱い。
さっきあんまりドキドキしなかった自分、ちょっとおかしいかもしれない。
「最後のわがままって言ってました。俊くんがピュアすぎてつらいです」
「ほっとけ。そのうち勝手に立ち直る」
「ほっとくしかないってのは、わたしにもわかってます。美香子先生に全部お任せするつもりです」
「あの先生、ちっこい割に胸デケェよな」
「殴っていいでしょうか?」
「こんくらい聞き流せよ。てか、自分はジョンのことさんざん誉めといて、おれが女を誉めるのはナシか?」



