赤信号で、車が停車した。
BGMは昨日と同じく、ビッグバンドの華やかなジャズ。
「この音源、ウォーターサイド・ジャズ・オーケストラのですか?」
「ああ。ライヴで録ったやつだ。雑音除去の処理をチラッと手伝ったんだけど、すげぇ大変だった」
「ライヴ録音ってことは、お客さんの歓声とかが入ってたんですか?」
「客の声や拍手だけならいいんだが、演奏してる連中がハイテンションになっちまって、奇声を発したり茶化したり笑ったりしててな」
「ええぇぇ……その無邪気さ、子どもですか……」
「子どもだよな。連中、けっこうケンカもするし、仲悪い組み合わせもあるんだけど、演奏したら仲良くなるんだよ。『こんなすげぇ音楽できるおれら、やっぱ最高』、って」
「微笑ましすぎます。何だそれ」
頼利さんが、ふっと笑った。
頼利さんもたまにライヴに出たりしてるって言ってた。
固定メンバー、いるんだろうか。
それとも、ヘルプで入る感じ?
どんな人たちと、どんな演奏をするんだろう?
訊いてみようか。
ああ、そうだ。ほかにも、頼利さんに訊きたいことがいろいろあったはずで。



