居心地のいい関係だと思ってたのは、わたしだけだった。
「俊くんのことはかわいいから、それでいて頼もしいから、弟がいたらこんな感じだろうなって、そういう意味で好きで……」
今さら、知らない男の人みたいな顔しないで。
「おれがなぎちゃんに『付き合って』って言ったら、うなずく?」
「うなずけない」
「ハッキリ言ってくれてありがとう。もう二度と、こんな話、しない。だから、今までどおり、夕飯食いに来てよ」
俊くんは顔を上げた。
居食屋のにいちゃんの営業スマイルだった。
わたしのほうが泣きたくなって、俊くんから目をそらした。
頼利さんが気まずそうなしかめっ面で、髪をわしわし掻いた。
ずっと黙ってた美香子先生が、座敷の畳を膝立ちで歩いて、俊くんのそばに寄った。
「よく頑張りました。でも、経験ゼロだから気持ち悪いなんて、自分で自分を否定しないで。俊文くんはいい子で、いい人で、いい男よ」



