ねえ、と俊くんに同意を求めて、わたしはそのまま固まった。
俊くんが、見たことのない表情をしていた。
眉間にしわを寄せて、二重まぶたのクッキリした大きな目を熱っぽく潤ませている。
たった今まで少年っぽいビックリ顔だったのに、急に何?
苦しそうな顔をして、じっとわたしを見つめる俊くんは、わたしの知らない男の人みたいだ。
「なぎちゃんは、バカだな。おれ、高校も行かなかったのは、なぎちゃんの年齢に追い付きたかったからなのに」
「え?」
「なぎちゃんの言うとおり、3歳の年の差は大きくて、おれはなぎちゃんの弟でしかなかった。
なぎちゃんは残酷で、彼氏ができるたびに、おれに紹介しただろ? おれがどんな気持ちで、なぎちゃんのかわいい弟を演じてたと思う? 想像したこともなかった?」
「ま、待って。俊くん、待ってよ、あの……」
「おれのほうが先に社会人になった。加納との恋愛で疲れ切ってたなぎちゃんを、おれにできる精いっぱいのやり方で励まして、そのまま時間が過ぎて。
なあ、なぎちゃんはいつになったら、おれが一人前の男だと気付いてくれるの?」
頭が真っ白になっていく。
熱っぽい俊くんとは裏腹に、わたしは熱から遠ざかっていく。
鼓動だけがアンバランスに速くて、そのスピードに呼吸が持っていかれそうで、胸が苦しい。



