体調が悪くて食欲がないだけなら、まだ我慢できた。
体調が悪いのに加納の性欲処理に付き合わされると想像すると、吐き気がした。
当時、付き合って3年目に突入したわたしの感情は、すでにそこまで冷めていた。
謝り倒すわたしの姿を、カフェの表のガラス越しに、俊くんが見ていた。
カフェから出るや否や、俊くんが加納の行く手を阻んで、わたしの腕をつかまえた。
親父もおふくろも心配してる。
帰ろう、なぎちゃん。
今日はおれが飯作るから。
「俊くんは、まるで本当の弟みたいなこと言って、加納のこと完全に無視して、バイクの後ろに乗せてくれたんだよね。
久しぶりの飛梅で、俊くんの卒業制作の試作品をいただきながら、俊くんからずいぶん叱られた。自分を大事にしなよ、って」
叱られながら食べる料理だったのに、それはとてもおいしい七草の雑炊だった。
春を予感させる七草の苦味とか、出汁の香りの優しさとか、小皿で添えられたしば漬けの風味とか、そういう些細な幸せを、わたしは忘れていた。
そっと幸せになれる料理だった。
だから、気付いたんだ。
わたしは、ハイスペックで贅沢で完璧で理想的な加納のこと、少しも好きじゃないんだって。
「なぎちゃんは優しいから、突き放せなかったんだろ」
「俊くん、またそれ言うの? わたしは優柔不断だっただけだよ。やっぱり何だかんだ言って、もったいないとも思ってたし」



