「違うよ、なぎちゃん。おれはグレたことなんかないよ」
苦笑いの俊くんが、わたしの話に割って入る。
「でも、あのころの俊くんは不良っぽい友達とつるんでて、バイクの免許も取って。しょっちゅう駅前のゲーセンのあたりにいたでしょ? うわぁって感じだったんだよ」
「しょっちゅうでもなかったんだけどな。暴走族みたいに思ってたんなら誤解だよ。
友達の中にはケンカや暴走をしてるやつもいたけど、その時間帯におれがやってたことといえば、店の手伝いだ。まあ、おれも親父とはよくケンカしてたけど」
「だよね。おじさんとケンカしてたよね。反抗期?」
「たぶんね。調理師学校で本格的に料理をやり始めて、親父のすごさがわかって、悔しくて。でも、その悔しさを上手に扱えなかったんだ」
「それでケンカしたり、ちょっと荒れたりしてたんだね。金髪事件とか」
そんなことあったな、と俊くんは顔をクシャッとさせて笑った。
今はスポーツ刈りに近い黒髪の俊くんだけど、調理師専門学校時代、いきなり金髪にしたことがあった。
しかも同時にピアスまで空けて、タトゥー風のシールなんか貼ったりしてて。
昔気質なところのあるおじさんは大激怒。
そんなチンピラみてぇな格好でうちの板場に入るんじゃねえ、って。
それを飛梅の店内でやるもんだから、お客さんたちが慌てて止めに入って、あれやこれやとなだめすかして、その間に俊くんは逃げ出した。



