「今日も、とか。そんな嫌そうな言い方しないでよ」

しょんぼりしながら、不貞腐れた声を出す仁織くんが可愛い。

クスッと小さく笑うと、それに反応するように彼が顔を上げてにこりと笑った。

ダークブラウンの髪を揺らしながら小首を傾げる、その仕草があたしの胸を鷲掴んでグラグラと揺さぶる。

そんなあたしの心の動揺を知ってか知らずか、仁織くんがちょっと近づいてきてあたしに手に何かのチケットをつかませた。


「今度の土曜日、中等部の文化祭なんだけど、美姫ちゃん来れる?」

「文化祭?」

そういえば、そうだった。

うちの学校は、中等部と高等部で2週間ずらして文化祭が行われる。

高等部のほうでも、そろそろ文化祭の準備が本格的になってくる頃だった。


「そのチケット1枚で4人まで招待できるから、友達と来てよ。うちのクラス、焼きそば売るから来てね」

「仁織くんが焼きそば売るの?」

「んーとね、俺は売るんじゃなくて焼くの。甚平着てハチマキ巻いて」

「へぇ」

仁織くんの甚平姿、似合いそう。可愛くて。

ちょっと見たいな。

土曜日、ふーたん暇かな。

頭の中でそんなことを思いつつ、仁織くんの誘いに明確な返事はしなかった。