「週に何度も、迷惑だよね」
遠くに見える仁織くんの姿に口元が緩みそうになるのを堪えながら、心にもない言葉を口にする。
「そんなこと言って。ジャノンボーイが待ってるとき、美姫、機嫌いいでしょ」
だけど、ふーたんはあたしの心のうちがお見通しらしい。
返す言葉を失って黙り込むと、ふーたんがあたしを横目で見て意味ありげに笑った。
「じゃぁ、ジャノンボーイによろしく」
あたしの肩をポンと叩いて、ふーたんは部活へと向かう。
彼女の背中を無言で見送ってから、あたしはちょっと浮つく気持ちを抑えつつ校門に向かった。
「美姫ちゃん」
歩いてくるあたしを見つけた仁織くんが、嬉しそうに笑って大きく手を振ってくる。
一瞬、その笑顔に向かって走り出したい衝動に駆られたけれど、ぐっとこらえて彼に軽く微笑み返す。
「今日も待ってたんだ?」
そっけなく訊ねると、仁織くんが眉根を寄せて肩を落とした。