また、知らない男のひとみたいな表情を見せつけられて、心臓がドクンと高鳴った。
あたしを見つめる仁織くんの顔から目がそらせない。
息が詰まりそうになってゴクンと唾を飲み込むと、彼がゆっくりとした動きで口端を引き上げた。
それと同時に、あたしに向かって伸ばされた右手が、少し湿っぽくなってしまった髪を撫でる。
人懐っこい顔でにこにこ笑って、年下の男の子っぽい可愛い表情を見せることが多い仁織くん。
そんな彼の、あたしを見つめる目が、いつもより鋭くなる。
髪に触れている彼の手に、そのまま強く引き寄せられそうな気がして、思わず身じろぐ。
その瞬間、仁織くんが歯を見せながら悪戯っぽくにこりと笑った。
「なーんて」
からっとした明るい声でそう言って、仁織くんがあたしの髪から手を離す。



