「どうして、って……」
空気読めっていう雰囲気の視線をむけられたけど、あたしには仁織くんがバスタオルを受け取ろうとしない理由がさっぱりわからない。
「これ、ひとつ使って。仁織くんが持ってきてくれたものだし。お天気いいからって濡れっぱなしだと風邪ひくでしょ?」
改めてバスタオルを外そうとすると、今度は仁織くんに正面から左右の二の腕をぎゅっと押さえつけられた。
「だから、ダメだって」
バスタオルごと二の腕を強くつかまれて、身動きとれなくなる。
バスタオル外すのの、何がそんなにダメなの……?
過剰に思える仁織くんの反応に驚いて目を瞬く。
ほとんど同じ目線の高さで、さらにかなり近い距離で目が合うと、仁織くんが気まずそうに目を伏せた。
「濡れて透けてるの、みんなに見られる」
「え?」
低い恥ずかしそうな声が聞こえてきて、一瞬ぽかんとしてしまう。
「さっきから、そのことが気が気じゃなくて。美姫ちゃんとの会話、全然頭に入ってこないんだけど……」



