どうやら彼は、友達とサッカーをしていて高等部のほうの裏庭に飛んできたボールを取りに来たらしい。

探しに来た友達に手を振ると、彼があたしを振り返る。


「あ、返事は急がないんで。また今度会ったときに聞かせてください。じゃぁ」


あたしに向かって爽やかな笑みを投げかけたかと思うと、ボールを蹴りながら友達のほうに走っていく。


「にしき、何してたんだよ。遅ぇよ」

「ボールすぐ見つかんなくて探してた」

友達と話しながら笑っている彼は、もうあたしのことなってすっかり忘れてしまっているみたいだった。


何なんだ今のは……

あたしを置いていなくなってしまった彼の言葉を思い出して茫然とする。


変な子。

また今度会ったときとか言ってたけど、中等部と高等部は校舎が離れてるしきっともう会うことはないと思う。


今井くんの告白のあとで変な中学生からの変な告白。

なんか、二重に疲れた。

ちょっとぐったりしながら、あたしは高等部の校舎のほうに戻った。