「美姫ちゃん、思ったより濡れたね。着替え持ってきてって言っとけばよかった」
俯いていると、肩に柔らかいものがふわりとのっかってきた。
顔をあげると、仁織くんがいつのまにかあたしの目の前に向かい合うようにして立っていて、肩にバスタオルをかけてくれていた。
「これも使って」
自分だってかなり派手に濡れている。
それなのに、スポーツバッグからもう一枚バスタオルを取り出した仁織くんはそれをあたしの前から肩に向かってパサリとかけた。
胸側と背中側と両方をバスタオルでぐるりと覆われたあたしは、てるてる坊主みたいだ。
「仁織くんのタオルは?」
「大丈夫。天気いいし、すぐ乾くよ」
仁織くんが、濡れたTシャツの裾をつかんでパタパタと扇ぐ。
その反応を見る限り、彼が持ってきたバスタオルバスタオルは2枚。
どうやらそれを全部、あたしに巻き付けてくれたらしい。
「だったら、あたしだって2枚もいらないよ。晴れてるからすぐ乾くもん」
「ダメ!」
身体の前面にかけられたバスタオルを外そうとすると、仁織くんに全力で止められた。
その顔が心なしか赤くなっているような気がして、首を傾げる。
「どうして?」



