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水鉄砲を手にしたあたしと仁織くんは、ふたりで水路の周りを駆け回って、キャーキャー言いながら水をかけ合った。
それから、スプリンクラーから定期的に放射される水のそばを走り回って、遊びに来ていた小さい子や小学生以上に水遊びを楽しんだ。
仁織くんと一緒に散々はしゃいで、荷物を置いた木陰に戻ってきたときには着てきた服が全身びしょ濡れになっていた。
「あー、楽しかった!」
ひさしぶりに、お腹の底から笑って走り回った気がする。
濡れた服の裾を絞りながら、大きく息を吐くようにそう言うと、仁織くんが嬉しそうに笑った。
「よかった。美姫ちゃんが楽しそうで」
「楽しかったよ。うち、弟ふたりだし、こういうふうにおもいっきり遊ぶのって大好き。でも、デートでは映画とか買い物もか。そういうことしかしたことないから、仁織くんのデートプランが意外だった」
「そう?子どもっぽくないかなーって俺はちょっと心配だったけど」
水鉄砲に残った水を抜きながら、仁織くんが少し眉を寄せて苦笑いする。
「楽しかったよ。遊園地とかこんなふうな外遊びとか、あたしは結構好きなんだけど、今まで付き合ってた人には『行きたい』って自分から言えなかったの」
「何で?」
空になった水鉄砲を振りながら、仁織くんが不思議そうに首を傾げる。



