つい感傷に浸っていたら、右頬にピュッと冷たい水が飛んできた。
「何、ぼーっとしてんの?」
頬に触れながら顔をあげると、仁織くんが悪戯っぽくニヤリと笑う。
「さっきからずるい」
小さくつぶやくと、仁織くんから投げられた水鉄砲を彼に突き返した。
「ごめん。美姫ちゃん、こんな子どもっぽい遊び嫌だよね……」
水鉄砲を受け取った仁織くんが、しょんぼりと眉尻を垂れる。
項垂れた子犬みたいなその表情が、ちょっと可愛かった。
クスッと笑いながら、仁織くんが地面に置いたままにしている筒状の水鉄砲を拾いあげる。
「嫌じゃないよ。どちらかというと好きかな」
あたしがそう言うと、仁織くんが弾かれたみたいに顔をあげた。
驚いたように目を瞠る仁織くん。
その顔に向かって、筒状になったシリンジ式の水鉄砲の水を勢いよくぶっ放す。
緩やかな弧を描くように水が飛んで、それが仁織くんの髪と顔に思いきりかかった。
「あー、ちょっと。美姫ちゃん!」
頭から水を被った仁織くんが、プルプルと首を横に振る。
「ちょっとドキッとさせるようなこと言っといて、不意打ちで襲撃するとかずるいっ!」
手のひらで顔を拭いながら口を尖らせる仁織くんの頬がほんのり赤い。



