「でも、今フリーなら、俺立候補してもいいですか?」
「は?」
彼が何を言っているのか、さっぱりわからない。
ポカンと口を開けていると、彼が口角をきゅーっと引き上げた。
「だから、美姫ちゃんの彼氏」
満面の笑みを浮かべる中学生の言葉に自分の耳を疑う。
何言ってるんだこいつ。
あたしがさっき今井くんを振った理由、ちゃんと聞いてた?
あたしに勝手なイメージを抱いてる、あまり知らない人とは付き合えない。
だから、しばらく彼氏を作る予定はない。
はっきりそう言ったはずなんだけど。
唖然とするあたしの前で、中学生が返答を待つようににこにこ笑っている。
どう答えるべきか迷っていると、中等部の校舎のほうから彼と同じ濃紺の学ランを着た別の男子生徒が駆けてきた。
「にしきー、ボールあった?」
「あー、燿。あった、あった!」



