「あ、美姫ちゃん?」
そうしたら、向こうから少し低い男の子の声が聞こえてきたからドキリとした。
「あの、誰……?」
知らない番号からかかってきたのに、名前を知られてる……?
それが怖くて震えた声を出すと、男の子が不満そうに答えた。
「誰って。俺、真野 仁織」
「え?あ、仁織くん?」
まさか、仁織くんだとは思わなくて、驚いて声が裏返る。
受話器を通して聞く彼の声は、普段と違って聞こえて全然気付かなかった。
「なんでそんな驚くの?こないだ番号教えたでしょ?」
「あー、うん。ごめん……間違えて登録消しちゃってたみたい……」
本当は、要らないと思って交換した日にすぐ登録を消してたんだけど、それは気まずくて言えなかった。
「えー、ひどい。俺、もしかしたら美姫ちゃんから連絡くれたりするかも?って密かに期待してたのに」
受話器越しに聞こえてくる、仁織くんのいつもより低い声。
その声でそんなことを言うから、ちょっと動揺してしまう。
「もう、またそんなこと……それで、何の用?」
「明日、行きたいところある?」



