「あれ、あたしが教えたってよくわかったね」
「『頑張れ、ジャノンボーイ』って声かけられたって言ってたから。仁織くんをそんなふうに呼ぶの、あたしの友達ではふーたんだけだし」
「そっか」
不服そうに眉を寄せると、ふーたんがふははっと笑った。
「気づいてたなら、助けてよね」
「美姫が困った顔してるのがわかったからなんとかしたかったけど、だからって告白っぽいってわかってるのにあたしがその邪魔するのってなんかおかしいでしょ。そしたらちょうど、校門前忠犬ジャノンボーイがいるじゃない。もうあの子しか適任はいないと思って」
不満げな顔のまま黙り込むと、ふーたんが愉しそうに笑った。
「いーじゃん。永尾先輩は撃退できたし、新しい彼氏ができてるって噂もたったし。しばらく美姫に男寄ってこないよ」
からかうようにそう言ってから、ふーたんがふと笑うのをやめる。
「あ、でも相手が中学生じゃあんまり意味ないかな」
悪気なく口にしたんだと思うふーたんの言葉が、胸にひっかかる。



