「ねぇ、美姫ちゃん。明後日の土曜日、デートしよ」
戸惑うあたしに、仁織くんが明るい声でそう言った。
「え?デート?」
冗談かと思って訊ね返したら、仁織くんが笑顔で頷く。
「そう。あの先輩の告白、しつこくて本当は結構困ってたでしょ。だから、助けたお詫び」
「そうだけど……そんな勝手に……」
「空けといてね」
あたしの反論を無視して、仁織くんが小首を傾げながらにこっと笑う。
そんなふうに笑顔を向けられると、もう断れなかった。
永尾先輩にははっきり拒絶の言葉を伝えられたのに。
仁織くんにはそれができない。
それだけ、あたしの心が彼に揺れてる……
一瞬そう思った自分にドキッとした。
慌てて首を横に振ると、仁織くんが何か思い出したように「あっ」と小さくつぶやく。
「そういえば。『ジャノンボーイ』って何?」
「へ?」
「美姫ちゃんが先輩に連れて行かれたことを教えてくれた人に『頑張れ、ジャノンボーイ』って声かけられたから」
不思議そうな仁織くんを見ながら、それを言ったであろう親友の顔を思い浮かべる。
ふーたん。
永尾先輩に連れてかれるところを見てたなら、声かけてよ……
楽しそうにふははっと笑うふーたんの声が聞こえてくるような気がした。



