「だ、だからって……仁織くん、あたしの彼氏なんかじゃないでしょ。永尾先輩にあんなこと言って、あたしが中学生と付き合ってるって噂たてられたらどうしたら――……」
胸の擽ったさや恥ずかしさ。
そんなのを全部誤魔化したくて言い訳していたら、体育館の外壁にトンッと軽く背中がぶつかった。
驚いて顔をあげると、あたしを腕の中に閉じ込めるようにコンクリートの外壁に両手をついた仁織くんと、同じ目線の高さで目が合った。
「確かに中学生だけど。俺、美姫ちゃんが思ってるほど子どもじゃないよ?」
あたしを心を射抜くような、仁織くんの真剣な眼差しにドキリとして言葉を失う。
壁に背中を押し付けられたまま茫然と目を瞠っていると、しばらくして仁織くんがにこっと笑った。
癖のある仁織くんのダークブラウンの髪が左右に揺れて、それまでの緊迫した雰囲気が嘘みたいにふわりと柔らかくなる。



