「今は中学生ですけど、あと2年もしたら高校生になります。ただ、美姫ちゃんより3つ年下なだけです」
「は?」
「それだけのことで、先輩に『彼氏名乗るな』なんて言われる筋合いないと思います。それに俺は、元カノ対策に美姫ちゃんを利用してるわけじゃなくて、本気で美姫ちゃんのこと好きなんで」
あたしには、そう言って永尾先輩を見上げる仁織くんの後ろ姿しか見えない。
だけど、先輩に向かってそう告げた彼の華奢な背中はものすごくかっこよくて、まるで正義のヒーローみたいだった。
仁織くんの背中を見つめるあたしの鼓動が、ドクンドクンと少しずつ速くなっていく。
仁織くんを睨み下ろしていた永尾先輩は、堂々と立つ彼に何も言い返さなかった。
言い返せなかったって言ったほうが正しいのかもしれない。
悔しそうに眉を寄せると、仁織くんとあたしを交互に見て不愉快そうに舌打ちをする。
「うざ」
それから、吐き捨てるように低くつぶやくとあたしと仁織くんの前から離れて行った。



