「あ、美姫ちゃん。ここにいた!」
そのとき、なぜか高等部の体育館裏に仁織くんの声が響いた。
あたしの方にジリジリ迫ってきていた永尾先輩が、体育館の外壁に手をついたまま振り返る。
「は?誰、お前」
中等部の制服を着た仁織くんを見た永尾先輩は、怪訝に眉を顰めると低い不機嫌そうな声を出した。
そんな永尾先輩を無視して、仁織くんはあたし達のほうに向かって足速に歩いてくる。
そうして永尾先輩の横に立つと、体育館の外壁にあたしを壁ドンしてる先輩の腕を押し退けた。
それから、先輩の前に立ちはだかるようにあたしの前に立つ。
「何?お前」
突然現れた仁織くんを、永尾先輩が不機嫌に睨むように見下ろす。
そんな先輩の前に、正義のヒーローみたいに立ちはだかる仁織くんの背丈はあたしとほとんど変わらないから、先輩からあたしのことをちっとも隠せてない。
あたしのほうからも、めちゃくちゃ怒っている先輩の表情が丸見えだ。
もし殴られでもしたら……
華奢でまだまだ成長途中な仁織くんは、確実に永尾先輩に負ける。



