「すみません。元カノ対策なら、他の人あたってください。先輩なら、他にいい人たくさんいますよね?それじゃあ」
もう一度、はっきりと拒絶の言葉を口にする。
永尾先輩が受け入れでも受け入れなくても、この場を立ち去る。
そのつもりで永尾先輩から顔を背けたら、すばやい動きでドンッと体育館の外壁に背中を押し付けられた。
「痛っ……」
コンクリートの外壁に背中が打ち付けられて、痛みに表情が歪む。
顔を顰めながら視線をあげると、体育館の外壁に右手をついた永尾先輩があたしの顔を覗き込みながらにやっと笑った。
「他の人じゃなくて、美姫ちゃんがいいんだよね。最初は可愛いからいいかなーくらいに思ってただけだけど、こんなふうにクールな反応してくれる子もおもしれぇなって実際話してみて思ったし」
体育祭のときは、統率力のある頼り甲斐がありそうな人だなーと思ったけど……
永尾先輩のあまりの話の通じなさに、頭が痛くなる。
「美姫ちゃん、付き合おうよ」
「いや、だからあたしは……」
にこりと笑いながら、さらに少し接近してくる永尾先輩。
その顔を避けるように横を向く。



