「だとしても、もうちょっとかわいげのある断り方もあるんじゃないの?お前、結構性格悪いな」

初めは「藤村さん」なんてあたしのことを優しく呼んでいた今井くんの言葉遣いが荒くなる。


「いいよ。ちょっと綺麗だからって性格悪い女はこっちから願い下げ」

今井くんは不機嫌そうな声でそう言うと、あたしを置いてひとりで高等部の校舎に歩いて行った。


どうしてあたしがキレられないといけないのよ。

人に勝手なイメージ抱いて告白してきたのはそっちのくせに。

こんなところに呼び出されて迷惑被ってるのはこっちのほうなんだけど。

早足で歩き去っていく今井くんの背中を見つめながら、裏庭の芝生を蹴る。


「おぉー、かっこいい」

そのとき、後ろから冷やかすような誰かの声が聞こえてきた。


何?今の話、聞かれてた……?

驚いて振り返ると、数メートル後ろにあたしと同じくらいの背丈の男の子が立っていた。

サッカーボールを小脇に抱えている彼は、濃紺の学ランを着ている。

それは、うちの学校の中等部の男子の制服だった。

そういえば、ここって中等部と繋がってる裏庭だもんね。

醸し出してる雰囲気的に、弟たちと同じか一個下くらいかな。