仁織くんの言葉を疑い始めていると、夢羽ちゃんがあたしを見て数回瞬きをした。
「にしきって……もしかしてにっちゃん?」
「夢羽ちゃん、知ってるの?」
「あ?誰だよ、にっちゃんて」
あたしの質問と、怪訝そうに眉を寄せた玲皇の声が重なる。
「えー、いたじゃん。にっちゃん」
夢羽ちゃんがそう言いながら、玲皇のほうに顔を向けた。
「そんなやついたか?」
「いたよ、小5のとき。あ、でもレオはクラス違ったから覚えてなくても仕方ないか」
「小5ってことは、ユウとリオと同じクラスだったやつ?」
「そうだよ。小5の初めに引っ越してきたんだけど、1年くらいでまたどこかに引っ越しちゃったんだよ。あたしはそんなに親しくなかったけど、リオはたまに遊んでたじゃん。リオの友達何人かとよく藤村家にも遊びに来てたでしょ?」
夢羽ちゃんが、玲皇から理皇に視線を移す。
うちに、よく遊びに来てたんだ……?
仁織くんがあたしに話してたことは本当だったんだ……
「美姫ちゃん、俺の初恋なんだ」
仁織くんの声と笑顔がふっと脳裏に蘇って、条件反射でぼっと頬が熱くなる。



