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仁織くんと放課後にアイスを食べて帰った、その週の土曜日。
お向かいに住む、弟たちの幼なじみの夢羽ちゃんが家に遊びにやってきた。
「美姫ー。夢羽ちゃんが、瑶子ちゃんの手作りおはぎ持ってきてくれたんだけど食べる?」
二階の自分の部屋でごろごろしてたら、お母さんが下から声をかけてきた。
手作りおはぎ。
その言葉に、ぱっと飛び起きる。
瑶子さんというのは、夢羽ちゃんのお母さん。
彼女の作るおはぎは絶品なのだ。
ときどき夢羽ちゃんが持ってきてくれる瑶子さんのあんこたっぷりのおはぎが、あたしは世界で一番好きかもしれない。
あたしが洋菓子より和菓子派なのは、瑶子さんのおはぎがおいしいからかも。
ウキウキしながら下に降りると、夢羽ちゃんと双子の弟たちがテレビの前の応接テーブルを囲んでおはぎに手を伸ばしていた。
「あ、美姫ちゃん。こんにちは」
あたしに気付いた夢羽ちゃんが、にこりと笑いかけてくれる。



