今の話を聞いて、「仁織くんストーカー疑惑」の疑いがはれる。
だけど、生意気な弟たちの顔を思い出すとちょっとだけ怒りが湧いてきた。
帰ったら即抗議だ。
「美姫ちゃん」
黙って眉を寄せていると、仁織くんに名前を呼ばれた。
顔をあげると、向かいに座っている彼があたしのほうに身を乗り出してくる。
その動きをぼんやり見ていると、仁織くんの手があたしの口元に伸びてきた。
「アイス付いてるよ?」
クスッと笑いながら、仁織くんが指であたしの口端をすっと拭う。
不意打ちで触れて離れた仁織くんの指先。
ほんの一瞬のできごとだったのに、それは優しくて温かで。
あたしの胸の温度を上げるのには充分だった。
何、今の。
年下の男の子の気まぐれに、頬が火照るのを感じる。
それを悟られたくなくて、仁織くんを睨むようにじっと見ると、彼が恥ずかしそうに左手を額にあてて顔を隠した。



