何、今の……?
ちょっとずるい。
頬が熱くなるのを感じて、さりげなく仁織くんから顔をそらす。
中学生の男の子相手に一瞬でもときめいてしまったなんて。
そんなこと、仁織くんに悟られたくなかった。
「行くならさっさと行こう。時間がもったいない」
「えー。どうせならゆっくり行こうよ。せっかくのデートなのに、早く終わったらもったいない」
素っ気ない態度をとるあたしの視界の隅に、不満そうな表情の仁織くんの横顔が見える。
余裕ぶってたつもりだったのに、仁織くんが恥ずかしい言葉たちを恥ずかしげもなくぽろぽろとこぼすから、また反応に困ってしまう。
「デートじゃないってば」
なんとかそう突っぱねてみたけど、あたしがどれだけ冷たい言葉を吐いても彼は痛くも痒くもないらしい。
「でも、俺にとってはデートだよ」
あたしの隣で仁織くんがにこりと笑う。
あれ、やっぱりなんだか調子が狂う……
にこにこ笑顔の仁織くんを横目でじっと見る。
あたしはそれ以上、彼に反論するのをやめることにした。



