「そのかわり、食べたらおとなしく帰ってよね」
「うん」
「あと、アイスはあたしが奢るよ」
「え、何で?」
嬉しそうだった仁織くんの顔が一変して、不満げなものになる。
「だって、あたしの方が先輩だし」
「それ、年下だってバカにしてる?」
そう漏らした仁織くんの表情がなんだか可愛くて、ふっと笑みがこぼれる。
「だって、実際年下でしょ」
意地悪く言い返すと、仁織くんが不服そうにあたしを睨んできた。
しばらくそうしてから、彼が横を向いて小さくため息を吐く。
「まぁ、いいや」
地面に向かってつぶやくと、仁織くんがぱっと顔を上げた。
「それでも、美姫ちゃんとデートできるなら嬉しいし」
目が合った瞬間、仁織くんが白い歯を覗かせて、やたらと嬉しそうに笑った。
クセのある彼のダークブラウンの髪がふわりと揺れる。
しょせん、弟たちと同じ中学生だ。
そんな余裕ができてたはずなのに、仁織くんが急におもいきり笑うから不意打ちをくらってドキッとした。



